夏のおもいで3 おたきさん
小学校の同窓会があった。
わたしは転校生だったんだけれど、転入してきたときにまず「前の学校で何て呼ばれてた?」と訊かれた。わたしが「たーちゃん」と答えると、クラスメイト達はしばらく思案した末、わたしのあだ名を決めてくれることになった。
そして後日開かれた学級会で、いくつかの候補の中からほぼ満場一致でわたしの新しいあだ名は「おたきさん」に決まった。その古風な響きを受け入れることは、齢8つのわたしには厳しいものだったが、何も言えなかった。
気に病まなくても、じきに「おたきさん」は「おたき」になって、中学校までには「たき」とか「たっきー」になった。
その宴のあいだ、わたしは席をちょこちょこと移動できるタイプではないので、ずっと同じ場所で同じ人達と話をしていた。
面子は、きーちゃんとひーちゃんといーちゃんという子達だったんだけれど、呼びかけているうちに何度かこんがらがってしまった。
当時はそれぞれが違う子とつるんでいたから、不便はなかったのかもしれないが、そりゃまぁ「たーちゃん」ではだめよね。わたしが「たーちゃん」のままだったらこの席はもう一段階複雑になっていたよね。
でも何故か、今回の同窓会ではみんながみんなわたしのことを、下の名前で呼んでいた。
あの学級会での多数決は何だったんだ。 忘れてんじゃねぇ。
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