蜜月
いいお菓子がうちにあると、父が異様にチェックしてくる。
父の職場にコモリさんという人がいるそうなのだが、嫌なおじさんだらけの場所で、コモリさんは父が唯一仲良くできるおじさんらしい。しょっちゅう「コモリちゃん、めっちゃおもろいねん」という話を聞かされる。多少体調が悪い日でも、「今日、コモリちゃんおるし行くわー」と頑張って出勤したりしている(これは父にしては画期的なのです)。
で、そのコモリちゃんは甘いものが大好物ということで、父は洒落た包装や箱に入ったお菓子をみると、「これ、何や? どんなや? 有名か?」と、怒涛の質問を浴びせてくるのだ。
コモリちゃんは歯が悪いので、あんまり固いものはNG。いつの間にかわたしと母の頭にもその情報が刷り込まれてしまい、デパートに出掛けたりするとすぐ、
あ、このリーフパイはコモリちゃんが好きなやつちゃうかなぁ? とか、ナッツ入りはコモリちゃんいけるんかな? とかいちいち考えてしまうようになった。
一体、どんな人なんよ。コモリちゃん。
今朝も、わたしが楽しみにしていたスティックチーズケーキを羨ましそうに父がみていたので、賞味期限が近いんやけど、と言い訳すると、
「大丈夫や!」
と2本大事に持っていってしまった。
きっと2人で仲良く食べるのだろう。
初老がなにしとんねん、という気持ちはあるが、できるだけ長く続いてほしいものよ……。と微笑ましくもある。
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