旅のはなし2
『盲人象を評す』って絶対に嘘。
水族館で、500キロを超えるセイウチに触らせてもらった。
すごいのだ。かつてないほどの分厚い手触り。なんだ、この非現実感。「あー、なんかわたし太ったな…背中が土佐犬みたいやん」とか言いながら自分の背中を気にしたこともあったが、そんなのまったく比にならない。
だいいち、のたのたと近寄ってこられたときの圧だけでもすごい。あれがオーラか?
わたしの人生史上では、横綱と目があったときと匹敵するくらいの迫力。まぁ、セイウチの場合は、セイウチの行動にまるで予測がつかない恐怖、というものも加味されているが。
とにかく、何倍も空気に敏感なひとが、あのただならない雰囲気を無視できるわけはなかろう。そばにいるのが象であってもそれは同じなはずだ。だってセイウチよりもっとでかいんでしょう。
しかし、ショーの目玉でもある“セイウチと触れあおう企画(輪投げやキス)”のときに、観客が誰ひとりとして立候補しないのには気まずかった。
アシカやイルカならば子供達がこぞって手を上げたかもしれないが、セイウチはなぁ…。ここでオトナのわたしが立ち上がるべきか、と迷ったが、セイウチが行き来するたびに床の水溜りが茶色く濁っていくのをみて、うわぁとおもってしまった。
まぁ、飼育員さんも「セイウチをみたいけれどもちょっと敬遠してしまう」そんな観客心を汲み取って、セイウチのうがいした水をわざとかけようとしたりして、わたし達をパニックに陥れたりして笑っていたけれども。
「セイウチを触ったあとの手はちゃんと洗ってね。めっちゃくさいですよ」と飼育員のお兄さんが言った。おそるおそる嗅いでみたけれど、無臭だった。
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