グッドデザイン賞
お墓参りに行く。
当初は霊園内の奥の方に、何故かぽつりと離れていたタキガワ家の墓だが、最近は続々とよその墓が増えてきて、どこにあるのか見失いがちになってきた。
親族は曲がり角の見極めに苦労しているようだが、わたしがいつも
「久龍さんとこで曲がるねん」
と、ナイスアシストをしている。
最近は、横長の墓石も結構多い。くまのプーさんの石細工が添えてあったり、ハートや天使の翼の彫りが入っていたりして自由な感じだ。けれども稀に名刺受けのあるような古風な墓もあったりして、写真に撮っておきたいくらいうっとりする。撮らないけど。
○○家、などと入れるところに、すきな言葉や漢字が彫ってあったりすると、故人様やご親族に想いを馳せざるを得ない。
恋とか希望とか絆とか。みなさん前向き。
やっぱりそういう方だったのかしら。
わたしなら何と彫ってもらおうか。
『雨垂れ石を穿つ』
説教みたいか。
下手すると、あのひと何も穿ててなかったよねー…と笑われていそうだ。
ならば単純に、私のすきな漢字 『閂(かんぬき)』 を採用しよう。
初めて『閂』と出会って感じた衝撃は今でも忘れない。おふざけか苦し紛れか。頓知をきかせたにしても、あまりにも無邪気なそのフォルム。
しかし四の五の言えない、その美しさよ。
わたしは『閂』の素晴らしさを、少なくとも三代先までは伝えたい。
閂 と中央に彫りこまれた清らかな墓。簡素だけれど凛とした墓。お骨を納めるところに、実際にかんぬきを配してもいいかもしれない。ああ、でもお盆の時出て来れないか?じゃあ、内側に。
改めておもえばかんぬき自身も、シンプルでいて頼りになる、なんて実直な装置なんだろう。そこへきて、そのかんぬきのイメージそのままを体現する『閂』。互いがこれほどに渾然一体となった漢字を、わたしは他に知らない。
血がたぎる。
みんな早くその魅力に気付いて!いや、気付かないで!
相反する感情で、今にもちりぢりになりそうだ。
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コメント
このコラムごと丸ごと東京ミッドタウンのデザインハブに送りつけるといいと思います。
きっと、浅葉克己さんとか福田繁雄さんとかが、何かとっても大事なことに気づいて、何かしてくれるはず。(あくまでも私の予想ですが)
投稿: はやかつ | 2010年8月12日 (木) 01時40分
はやかつさん
そして東京ミッドタウン霊園が…?(違うよ)
東京の霊園は広くて、著名人のお墓参りをしているよその土地の方も多いので、怪しまれずにゆっくりできるのがよいです。
投稿: タキガワ | 2010年8月13日 (金) 23時23分