Sのフック
クローゼットに掛けるS字フックを買おうとおもい、外出のついでに100円均一の雑貨屋さんに行った。
ところがそのお店においているS字フックは、見知らぬキャラクターが中央に配してあり、どうせ仕舞い込むものであってもわたしの美意識に反していた。
「この一種類ですか?」
と、店員さんに確認しつつ、あたりを見回すと、まさにわたしが求めているような普通のS字フックがあちらこちらに掛かっている。無数の理想たちが商品を掛け、がしがしと棚からぶら下がっている。
何故売らない。
こんなにS字フックに囲まれていても、わたしの手に入るのはこの奇妙なフック一点のみ。触れられる距離にあのひとはいるのに、なのにわたしの人生からは一番遠い場所にいる。わたしは無力だ。
わたしは、キャラクター付きのS字フックをしみじみと眺めた。きみは誰だ。でも、そんな彼すら愛せる日が来るのかもしれない。それが人間の、オトナの生きる道なのかもしれない。
諦めのなかで、人は老い死んでゆくのか?それが人生なのか?
これも悪くなかったな。最終的にそうおもえるのなら、それが仕合せ?
解らない。
わたしに解るのは、今も昔も100円均一のデザインは、油断するとファンシーへ向かう、ということのみだ。
結論。
もうちょっと探してみます。
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