いちじくの食べかた
たんぽぽのミルクみたいな白いのを、指に擦りつけていたら叱られた。ささやかに毛羽のある、べとついた膚をそっとつかむ。
しりに親指をあてて、むしりとひらいてやると、それは崩れるように簡単にうらがえる。うっすら愛らしく染まった果肉が掌をぬらす。わたしにはこまかく震えているようにみえる。押しつけがましく。
唇を肉に沈める。とたんにわたしは外皮との境をみうしなう。どこまで食べていいものか解らず、舐めるように貪ってしまう。
「よく熟れて美味しいでしょう」
流し台から母の声がする。
傷みかけたいちじくは甘くない。微かながら、ねばるような芳香がする。
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