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ささくれ

 あたしたちは双生児みたいにくっついて、いつまでもいつまでも一緒にいたい。いちまいの掛布団を分けあって、ころころころころ転がっていたい。

 そう言ったら、あなたは笑った。その顔がきらい。

 焦れたあたしは、拳を振り回す。あなたとあたしはコトバが通じないから、結局こんなふうになる。あなたは不便をかんじていないみたい。変なの。

 あなたはあたしの裸の背中を撫でてくれる。やめて。そのがさがさの大きな手もきらい。

 あたしは爪切りを探してあげる。でも、あなたは待たずに自分の歯でこそげていた。

 血がでたんじゃないかしら。手をとると、ささくれがまだ剥けかかって残っている。つい、皮をぴりぴり引っぱると、空っぽでまっ暗な彼の内部がのぞいた。

 道理で。

 その暗闇に、あたしの涙が吸いこまれてゆく。

 あなたと抱きあうと、胸がぽかんと虚しくなるのは、そのせいだったのね。

 最後に笑顔がみたかったけど、あたしはすでに頭からなにから、なんにもなかった。

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