16才
何となく寄った花屋にとてもうつくしく花を扱う店員がいて、けれど私の目が奪われたのはそれが理由ではない。
彼と私はかつて同じ教室にいた。おもいでになるほどの事はひとつとして起こらなかったが、お互いが大人になっていても私は気付く。
軽い会釈の後、あじさいを抱えておもてへでると、すぐさま16才が付き纏った。そのせいか、私には細々とした用事が増えた。おもに店の前を通り過ぎて足すものだ。
手入れを怠らないあじさいは、まだ部屋の隅で息づいている。萎れてうなだれる間隔は、日に日にみじかくなっているが。
あたらしい花を買おうか。私が呟くと、16才は嫌々をする。事実、あれから結界でも張られているかのように、私はあの店に立ち入れない。瀕死のあじさいをまるごとバケツに入れて蘇らせていると、16才がいつの間にか傍に立つ。私はただ見下ろされている。
どこからやり直せばいいのかが、解らなかった。
花屋を通れば横目で窺うのは、私の癖だ。ウィンドウのなかには彼の姿がなかった。今日はお休みなのだろうとおもう。
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