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16才

 何となく寄った花屋にとてもうつくしく花を扱う店員がいて、けれど私の目が奪われたのはそれが理由ではない。

 彼と私はかつて同じ教室にいた。おもいでになるほどの事はひとつとして起こらなかったが、お互いが大人になっていても私は気付く。

 軽い会釈の後、あじさいを抱えておもてへでると、すぐさま16才が付き纏った。そのせいか、私には細々とした用事が増えた。おもに店の前を通り過ぎて足すものだ。

 手入れを怠らないあじさいは、まだ部屋の隅で息づいている。萎れてうなだれる間隔は、日に日にみじかくなっているが。

 あたらしい花を買おうか。私が呟くと、16才は嫌々をする。事実、あれから結界でも張られているかのように、私はあの店に立ち入れない。瀕死のあじさいをまるごとバケツに入れて蘇らせていると、16才がいつの間にか傍に立つ。私はただ見下ろされている。

 どこからやり直せばいいのかが、解らなかった。

 花屋を通れば横目で窺うのは、私の癖だ。ウィンドウのなかには彼の姿がなかった。今日はお休みなのだろうとおもう。

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夏の夜の闘い

暑くなってきた。

こんなときにお役立ちなのが扇風機だ。だが、昔たしか長渕剛が出ていたドラマで、お風呂あがりに扇風機の前で寝転んでいた妻がいつの間にか帰らぬひととなってしまった…というのを聞いてしまってから、恐い。

しかし、この時季になると暑さで夜中に何度か目が覚める。で、扇風機をつけてしまうわけなのだが、そうするともう眠れない。スペースを最大限に利用して、扇風機との距離は充分だ。でも本当か?本当にこれが適正距離か。勿論、風量は弱。そして「ゆらぎ」。一応タイマーを30分に設定する。30分?寝れるか?1時間くらいなら安全だろうか。いや、でも待て!膝の高さの水深でさえ、人は溺れることがあるという。

娘のわたしがこんなにナーバスになっているというのに、あの頃一緒にドラマをみていた母ときたら、びゅんびゅんの扇風機の真下で寝ている。何考えてんだ!

そんな光景を見かけた時には、親切な小人さんよろしく、扇風機を母から引き離す。

なのに!数分後に(気になって)様子を見に行ったらば、扇風機の真下に再び移動しているではないか!

再度引き離す。しかし母は食らいつく。なにをぅ、とコンセントを抜く。母に怒られる。

こうして蒸し暑い夜は明けていくのだ。眠い。

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霊感(少)女

職場でバックヤードの棚の整理をしていたら、唐突に上から段ボール箱がひとつ落ちてきた。

からっぽだったので、ちょっとびっくりしただけだったが、間髪いれずにわたしは棚の上を睨みつけてやったね。

なんだ?てめー。やんのか?

おそらく、箱の積み方が不安定なだけだったのだろう。ただ、霊関係だとまずいとおもったのだ。お断りしておくが、わたしに霊感は一切ない。もしかしてもしかして、霊感はあるものの霊とすれ違ったことすらない、ということなのかもしれないが。

家でも、たまに天井の辺りが「ぱきっ」というだろう。

木が呼吸しているから…だのなんだのと聞くが、やっぱりすかさず睨みつけてやる。

万が一、霊だったとして、こっちが見えないからって好きにされてたまるもんですかい。

備え(?)あれば憂いなし、なんだぜ。

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衰える

昔から、パン屋さんや喫茶店に入ると、突然割れるように頭が痛くなることがあった。 

5年ほど前に働いていた和食屋さんでも、店のある場所に立つと同じ症状がでた。これは霊だとおもった。なんか小汚いビルに入っていた和食屋さんだったからだ。

ところがある日、そこに立っていても一向に頭が痛くなる気配がなかった。一緒に働いていたひとと、今日は痛くないっすよ!除霊成功??と手を取り合っていたら、つかつかと歩いてきた料理長がわたしの足元にあったべープ(蚊取り)のスイッチを入れた。

い、痛いよ~~~~

その形状から、わたしがべープだとおもっていたものは、超音波(?)を発するネズミ捕りだったのだ。

たしかに飲食店は、おネズ様との戦いだ。石鹸で手を洗っていたら、石鹸の中から折れたおネズ様の歯がでてきたこともあったし、ロッカーの中の着物におネズ様がフンをするので、鷹の爪を呪いのようにぶらさげていた。

その日の帰り道、わたしは頭の痛くなるパン屋に寄った。棚の下の片隅に、偽ベープがいた。激痛に歯を食いしばりながら、それだけを確認して帰った。

ところが、2年ほど前からどこに入っても、あのキンとした頭痛を感じることがなくなった。世の中のネズミの数が減ったのか(まさか)。もっといいネズミ捕りが開発されたのか。

それとも。ネズミ捕りのあの機械は、若者しか感じられないというモスキート音で出来ていて、わたしが若さを失ってしまったためだとでも言うのか!

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メールちゃん失踪事件

電子メールが使えなくなって、何ヶ月経つだろう。

ある日、久しぶりにOutlookを開けてみたら、いつもは青っぽい画面がオレンジ色になっていた。しかもいきなり表示される言葉が「スタートアップ」だ。なんだ、スタートって。今までわたしがしていたメールはスタート以前か。幻か。

よしそれなら、とスタートしようとすると「準備が完全でありません」。

なんだよ…。

スタート地点にすら立たせてもらえないわたし。ブログなんかをはじめて、電脳デビューかとおもいきや立ちはだかる壁。わたしのメールを返せー!(返せー!)

と、いうわけで新しいメールアドレスを貰おうかとおもっています。もしも、タキガワにメールしたのに返ってこねーよー、あいつ何やってんだよー、という方はお申し出下さい…。ごめんなさい、と謝ります。

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封印カレー

久しぶりにカレーをつくりたい。

特にルウからつくっているわけでもなく、数種類のルウをあわせているわけでもないのだが、何故かわたしのカレーは評判がいい。普段決してわたしの料理を口にしない父ですら、褒め称えてくれる。他人にも言う。うちの娘のカレーはおいしいんですよ!

「わー何か凝ってらっしゃるんですね?」

いや…ジャワカレーの中辛です。

ただ、そんな得意料理も母の妨害により、うちではつくれなくなってしまった。父が褒めすぎたことにより、母が本格的カレーを研究し始めたのだ。

自粛ムードに追いやられたわたしが、カレーをつくれるのは外に限られてしまったわけなのだが、外でカレーをつくる機会はそうそうないだろう。例えば恋人につくってあげるとか?でも食べたいか?真っ先に普通のカレーを。ジャワカレーがおいしいのは、わたしではなくハウス食品の手腕だ。

キャンプか。飯盒炊爨なのか。文字通り、外。

紫外線に弱いわたしの野外活動は限られる。闇カレーか。

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