群青警報
100日のあいだ、日照りは続いた。
乾ききった喉をいためながら、私達は広場に立つ。落ちた影が夜より深い。空はとても高くまで澄んでいる。体をいくら縮こめていても、誰かとどこかが触れる。人熱れで私は息もつけない。
かなしい話をしよう。
拡声器ががなる金属音混じりのスピーチで、妙齢の女性の集団が重なりあうようにして泣きはじめた。それを遠い目で見ていた人々も、のろのろとした動作で涙を絞りだす。すすり泣きのさざ波が、わんと押し寄せる。
恋人は私と手を繋いだまま、不器用な仕草で香水壜をとりだした。その香りで恋人の眸が濡れる。肌を焦げつかせる日差しは、湧きでる水を乾かしてゆく。恋人の頬に白い跡が残った。
はやく泣きなさい。
見知らぬ男が私を急かし、黒くつややかな目玉が一斉に私へ向く。恋人は私をそっちのけで号泣している。壜の中身が干上がったと言っては喚き、涙の結晶がしみると言っては呻いている。
どるどると渦巻く熱の真ん中で、私の汗は蒸発してゆく。
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