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かめ

白日の、じっとしていても汗が滲む河原で声を掛けられる。彼に会うのは久し振りの事だったので、誰だかおもいだせずに本当に戸惑った。

 彼は裸で川に浸かっていた。確かに今日は夏日だが、その振る舞いは彼の慎ましいイメージに反している。しかも案外着やせする質なのだな、とその体にさりげなく目を走らせておもう。

 勧められるまま、僕も足を水に浸した。足の裏の熱が、さらさらと流れてゆく。マッサージがてら、河原の石で土踏まずも刺激した。

 色々な石で試していたら、そのうちのひとつがみしりと割れた。彼のみじかい悲鳴で、僕はそれが何かを悟った。謝るよりはやく、彼は僕をなじった。

 一体何を着て帰れっていうんだ!

 彼は甲羅のかけらをかき集めながら、あからさまにムッとした顔をする。こんなところに脱ぎ散らかすほうも悪いとはおもったが黙っていたら、彼は甲羅を抱えて行ってしまった。

 彼の去りしなに、かけらがひとつ転がり落ちた。僕は、その背中を呼び止めようとして気付く。

 なんて呼んだらいいんだろう。

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