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雑音

 おれの頭のなかに、虫がはいり込んでしまった。始終ぶんぶんと飛び回っていて、やかましくてかなわない。

 先日、山歩きの際に耳に飛び込んできたやつを放っておいたのがまずかった。本当は山になんて行きたくなかったのに、何故行ってしまったんだろう。魔がさした。ほんの気紛れだったのに。

 虫は細かな羽音をたて続け、いつも突然に大人しくなった。そして、忘れかけた頃にまた盛んに動きだす。あんまり頭を揺らすと、虫が驚いて余計に手に負えなくなるので、おれは毎日そうっと歩いた。

 目を閉じて、穏やかに呼吸していると、あるかなきかの微かな存在が、頭蓋骨をくすぐるのが解る。おれはその感触を辿りながら眠りに就く。

 よく晴れた日だった。その日、虫は朝から途切れ途切れに羽を震わせ、とうとう何もいわなくなった。

 静寂のたてる音は深く、それからおれは眠れないのだ。

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